モンゴルだるま@草原とウランバートルいったりきたりで落ち着かない、です。
こんばんは。

今日は朝は大雨、午後からガンガン猛暑、という1日でした。
雨が降っている間にデスクワークとか電話応対などをやってるうちにあっという間に夕方近くに・・・

草原でピンクワゴンの修理をしていたガナー君が戻ってきたので、外回りの仕事を片付けちゃいました。

で、閉店間際のナラントール市場に駆け込みまして、ちょっぴり大きなお買い物w

先日、馬の購入に先立ち、馬具の購入をしたのですが、やっぱり鞍とか鐙とか鞍敷きとか腹帯とか、具体的に馬の体や乗り手に合わせてカスタマイズの必要が出てくるのですね。

買ったものをそのまま使えるっていうシロモノ、モンゴルでは意外と少ない気がします。

リフォーム済み!っていわれて購入した中古アパートですら、やっぱり3週間ぐらいのリフォーム・修理工事が必要だし、車だって新車って言われて購入しても、ボルトの一個から自分で点検し、シートやらシートベルトなどをカスタマイズしなければいけない国であります。

そして、馬具。
見かけが立派であるとか高級である、とか伝統的なものである、とかそういう薀蓄はさておき、体にあってるかどうか、がとても重要です。

乗馬ってひとつ間違えると大怪我や大事故に繋がるので、常に馬具のメンテナンスや馬の体の状態のチェックに気を使う必要があるのです。

人がしょっちゅう使っている道具って、ボロボロのようで、実はとても機能的になっています。
手綱なども、馬の気性や走る癖などにあわせて、結び目があって、キャンターやギャロップで走るときに握るところ、ゆったり速足とかでパカパカするときに握るところがわかりやすくなっていたりします。

お尻のあたる部分はさておき、今回は、馬具職人・故ガンボルドさんの初期の革鞍にあわせて鞍敷きの調達と体重の重い私の鞍がズレないようにするためのW腹帯などを購入しました。

ガンボルドさんの鞍はブリティッシュサドルを参考に、モンゴル馬の体型やモンゴル乗馬にあわせて作られた鞍なのですが、馬の背にあたる部分がちょっと特徴的な形状でフェルト加工がされているのですが、体型が小柄な馬の場合、ちょっと背中に隙間ができてしまい、乗馬初心者や体重が重い人が乗ったとき、激しい鞍ズレをしてしまうことがわかりました。

解決策として鞍敷きをダブルにして、背中のショックをやわらげようという作戦をとることにしました。

初心者の方がちょっと馬に乗っただけでお尻がすりむける、ということがあります。
それは、モンゴル乗馬のやり方と、よくインターネットや本など参考にできるような「馬術」とか「乗馬入門」といった文献資料に出てくるブリティッシュスタイル、ウェスタンスタイルと根本的に違うから。

基本的には、乗馬って、バランスとインナーマッスルと重心のコントロール+馬とのコミュニケーション=馬と人間の生態・体制の調和で上手い下手が決まるスポーツだと思っています。

モンゴルでの乗馬の場合、やっぱり腰や膝、内腿やふくらはぎなどを意識して、馬の行動を制御するってところは同じなんだけど、そもそも、鞍の上に「どっかり座る」っていうことがまずないのです。

ツーリスト用の鞍ならば、わりとキャンターやギャロップのときに、鞍に「座った状態」でも腰の動きで馬をスピードに乗らせる」ことができますが、それって馬の背中には、乗り手のお尻と同じかそれ以上の衝撃がかかっているのです。

キャンターなどのときは、確かに、パカラーン、パカラーンっていうリズムでぐいーんぐいーんって前後上下に体が動くことになるので、座っちゃったほうが安定しやすいのですが、ぱからーん、のラーンのところで、ずしーん、ずしーんと馬の背中の鞍があたる上のほう(つまりは背骨と皮が薄くくっついているあたり)にハンマーをうちつけてるというか、やすりをかけているような状態になっちゃってるのですよ。

想像してみてください。

よつんばいになった自分の背骨が浮き出ているあたりの皮をおろし金とかかんなとか鑢でゴリゴリやられているっていう状態を。

ね、痛いでしょ!痛そうでしょ?

これまで馬に乗ってても、ツアーのガイドをしていると、馬は鞍がついた状態で、「よろしくお願いします」になり、鞍がついた状態で「ありがとうございました」と別れてしまうことが多かったので、それほど深刻に考えたことがなかったのですが、自分の馬、となると現金なもので話がまったく別。

やっぱり健康でいて欲しいし、ムリな乗馬で体を酷使させたくないって思うわけです。

つねに背中や足の状態、毛の色艶や目の光、耳の状態や、腰骨とか腿あたりの肉付き、呼吸などなどあらゆる部位が気になるのです。

私も人よりもずーっと体重が重いので、どうしても馬に負担をかけてしまいガチ。

で、やっぱり何が馬の鞍ズレの原因になるのか、ってことに気を使うようになり、いろいろ研究してみたわけですね。

お客様のお尻の皮がひんむけることも心配ですが、同時に馬の鞍ズレも心配なのです。

馬の鞍ズレは背骨の一番肉皮が薄い部分に出来やすく、かつ1度できると直りにくい上に癖になりやすいというとても困った怪我なのです。
鞍ズレしてるから、といっても馬はそんなことで、「今日は背中が痛いから走りたくないんだよ」といった拒否はしません。乗り手が指示を出せば、「痛いなぁ、辛いなぁ」って思いながらも健気に命令に従って、パカラーン、パカラーンでも、パカランパカランでも走るんです。うぅ、健気。いたいけ・・・

馬の背中の鞍ズレと、お客様のお尻の皮剥けは、鞍をはさんで表裏一体、一心同体少女隊(あ、わからなくてもいいよ、)だと考えていいんじゃないかな。

この前、大学の後輩が1日乗馬に参加してくれたときに、100km以上を乗馬トレッキングするツアーに参加して、お尻が向けて血まみれパンティが10枚ぐらいになった人がいる、って話をしてくれました。
驚愕です。なんで、3日も4日も続けて馬に乗るのに、そんな毎日お尻が剥けるのか?そもそもお尻が剥けるっていうのは、正しい姿勢で馬に乗っていないからで、いくら日本の女子がスタイル抜群で軽やかな人が多いといったって、馬の負担だって相当なことになってるってことじゃあないか!

そして、それはお客様にとっても、馬にとっても、とっても、とってもかわいそうなことじゃないか!

お客さまがお尻にパッドいれるだの、鞍に座布団やらクッションやらをはさむだのすれば、「お尻の皮がむけません」なんて対応してたって、馬の背中の衝撃が軽減されるわけではないのです。

モンゴルの馬には、彼らの体にあった乗り方があり、それはモンゴル人の乗り方であるわけですね。
で、ソレを観察していると、シリッペタがべったり鞍にくっついているってことはほとんどないってことがわかります。
つまりは仙骨が立たないで、ペッタリ、背骨が反り返ったような形でゆるんでいるってことはないのです。

重心をとるっていうのがどういうことなのか、ってことにも関係してくるんだけれど、猫背の人がいくら前に重心をのせようってしても、結局はお尻に力点がいっちゃう。

モンゴルの鞍って、ツーリストサドルのような形になっていても結局、鐙の位置は鞍のほぼ真ん中についていて、「鐙の上にふんばって立つ」状態が一番重心がとりやすく安定するようにできているのです。

ブリティッシュやウェスタンスタイルの鞍が、腰をどっかりつけて、腰骨でぐいんぐいんと押し込むようにして馬を前にすすめるために、鐙はなんとなく足を前にふんばれるような位置につけているのとは違うから、そもそも、走るときに、どっかり座っちゃだめなのです。

いっくら、リラックスして乗ってください、といってもソファの上でふんぞりかえってテレビを見る、っていうリラックス状態ではないのです。

意識的には、野球の内野手の気持ち。緊張感漂う守備のときに、かかとをどっかり地面につけて、ぼーっとした状態でフィールドにつったってる選手はいないはずです。

馬体をふくらはぎ、内膝と内腿できゅっと抱えるような感じに自分と密着させようとすれば、お尻も自然とキュンと引き締まり、なんとなく尾てい骨は浮いたようになるはず。
裸馬に乗ってみると、馬体と人体が心地よく密着するときの姿勢じゃないと、馬を走らせることができないってことに気付きます。

もともとモンゴル人にとって馬に乗るのは移動手段というだけでなく、様々な作業をするための手段です。

その様々な作業の多くは、戦闘・合戦だったり、馬を捕まえるとか、何かをおっかけるとか、馬と協力しながら、激しく危険が伴うものだったりします。

お尻の皮がひんむける乗り方をする人たちは、多分、皮剥けのお尻に意識することはあっても、内腿とか内膝とか、足腰の前部分の動きにまで気が回らないんじゃないかな?

ちなみに、お尻の皮がむけるのはスリムな人のほうが多い。
それは、馬の鞍ズレが痩せている小柄な子に多いのと一緒。

ゆえに、ぽっちゃりさんな私は乗馬暦30年にして1度もお尻の皮剥けを経験したことがないのです。
やはり障害馬術の選手であり、引退した競争馬の調教などをしていた実母によると、私の乗り方って、「妙に鞍にはまったお尻」なんだそうです。すいつくように鞍と体が一緒になって動くタイプ。
体重が重いから、はねることがなく、なんとなく裸馬に乗ってるのとあんまり変わらない状態らしい。鐙も大抵、「そんな短くできないよ」っていわれちゃうから、長めだしね。

お客様にあわせて、暑い日によく走るコースでガンガン走っちゃったりしたときは、やっぱり、馬と鞍の相性によって鞍ズレを作ってしまったりします。
なので、最近は、モンゴル鞍か軍用鞍って言われる立ち鞍を使うようにして、乗り方も少しずつモンゴル人男子な乗り方へと改良しているところです。

姿勢とか体重移動って、文字で書かれたものや映像資料などをいくら見ても、会得は難しいです。
自分であれこれ試してみて、苦労して、あーでもない、こーでもないって迷いながらも考えているうちに、ある日、ふわっと、「なんだ、これでいいんじゃん、簡単ジャーン」ってなるんだと思います。

馬にのって草原をばーっと走る気分は爽快です。

でもね、、、私が一番好きなのは、馬の気持ちと自分の気持ちが重なったペースで、馬の足取りもルンルンな感じで、どこまでも、どこまでもジョギングみたいにポクポク、パカパカと草原や森を自由に散策することだったりします。パカパカ、ポクポクだとわりと馬も周囲や進行方向に気を配ってくれるから、なんとなく自分が無心になったり、いろんなアイディアを思いついてニヤニヤしたりと乗り手が余裕を持っていても安全なルートで走れるからです。

乗馬の達人・遊牧民君たちの草原での乗馬を見ていると、いつも無我夢中で疾走しているわけではなく、ぱっかぱっかとかとことことノンビリしてるときもあるし、パカラーン、パカラーンって気持ちよさそうに走ってたり、パカランパカランってダッシュさせたりと緩急自在です。

移動しているところの大地の状態や風の状態などでも走り方は変えています。
そして、馬の気持ちや体力なんかも考慮しながら乗っています。腹帯のことなんかも気にしています。

いい馬っていうのは、いっぱいいるけれど、悪い馬っていうのは多分世界中どこにもいないって思っています。

競争馬としては、駄馬って言われちゃう子もいるかもしれないけれど、基本的に馬はみんな良い子です。

悪い乗り手はいても、悪い馬っていうのはいない。

特にツーリストに提供される馬は大抵がおとなしくてよい子です。

ただ、乗り手の力量によっては、馬が制御しきれなくなることもある。
馬と乗り手の意志の疎通がツーカーじゃないと、馬も歩きづらいし、走りづらい。

結果的に、「私の言うこと聞いてくれなーい!」ってことになっちゃう。
でも、逆に、「じゃ、馬の気持ち、感じてますか?」ってきけば、やっぱりわかんないって答えが返って来る思うんですよね。

上達するかどうかって、技術については、練習、場数だと思うけど、やっぱり、トータルで楽しい乗馬ができる人になれるかどうかは、馬のことを「かわいい!いい子!」って好きになって、一緒に楽しい時間をすごそうねって思えるかどうかにかかってるって気がします。

馬との相性ってもちろんあると思うので、1日乗馬とかトレッキングなど、何時間も続けて馬に乗るって場合は、お客様とオハナシしたり、馬の走り方や状態などを見て、時々取り替えたりしています。

馬にとっても、乗り手が変わることで気分転換ができたりすることもあるだろうし、ほんと個性豊かな子達なので、そういう意味で、「旅のご縁」っていうのが大事だと実感させてくれますね。

今、うちでお客様に乗っていただいている馬は、全部、私、乗ったことがあります。自分が乗ったことがあるから、「この子はどんな性格か」ってわかってる。どんな風に乗ってあげたら、気持ちいい!って一生懸命走ってくれるかとかね。あと、硬い走り、軟らかい走り、ノンビリ屋、走り屋、フォロワー、トップ屋、けつもちなど、一緒に何頭かで走るときに、「自分はこの位置がべスポジ」っていうのを馬それぞれにもあるらしいので、そんなことと乗り手の個性や力量などにあわせて、マッチングしています。

馬は乗り物ではあるけれど、心を持っていて、結構感情豊かというか、人を見て、自分の「歩き方」を決める生き物でもあります。
馬に乗るっていうのは、タクシーやバスに乗るのとは違って、いわゆる「あいのり」なのです。
一緒にその日を楽しく過ごすための相棒なんだって気持ちで乗っていただけたら、モンゴルでの乗馬はすごく楽しく、おけつも痛くなく満喫していただける、と思います。

あ、ちなみに、お尻の皮剥けと馬の鞍ズレには、オロナインH軟膏やマルコフラノン軟膏などが効果的です。

それでは、
Have a nice riding horse in Mongolia!

7月中は関係者一同多忙につき、一時乗馬プログラムをお休みさせていただいちゃいます。

8月前半にまた再開する予定です。

お楽しみに。

あ、日帰り乗馬やトレッキングなど8月1日から8月12日までの間で日帰り、泊りがけのトレッキングをご希望の方がいらっしゃったら、mongolhorizon`☆gmail.com(☆印を@マークに変えてね)までご相談メールくださいませ。

これから、ちょっとバタバタしちゃって、返事が遅くなることもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

皆様と楽しく充実した馬旅をご一緒できることを楽しみにしています。